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オフィスノウハウ

すべての人にやさしい「ユニバーサルデザインオフィス」とは?現代に求められる働きやすさ

すべての人にやさしい「ユニバーサルデザインオフィス」とは?現代に求められる働きやすさ

商業施設や公共施設といった、不特定多数の人が利用する施設における「ユニバーサルデザイン化」が進みつつある日本ですが、オフィスにおけるユニバーサルデザイン化はなかなか進んでいません。

しかし一方で、少子高齢化による働く人の高齢化や、日本国外からの労働者確保に対応するためにも、オフィスにおけるユニバーサルデザイン化は最も求められている分野とも言えるのです。

オフィスにおけるユニバーサルデザインとはどのようなものか、導入時にどのような部分を意識すればいいのかを解説します。誰もが働きやすい環境を目指して、オフィスの移転やリニューアル工事と合わせて、検討してみてはいかがでしょうか。

1.ユニバーサルデザインとは

まずは、そもそも「ユニバーサルデザイン」とはどういうものなのか、基本的な考え方を知っておきましょう。

1)ユニバーサルデザインの定義

「ユニバーサルデザイン」とは、年齢・国籍・障がいの有無にかかわらず、誰でも快適に使える空間をデザインすることを表現した言葉です。

ユニバーサルデザインには、その考え方を浸透させるためにまとめられた「7原則」が存在します。

(1)誰でも同じように利用できる「公平性」

(2)使い方を選べる「自由度」

(3)簡単に使える「単純性」

(4)欲しい情報がすぐにわかる「明確さ」

(5)ミスや危険につながらない「安全性」

(6)無理なく使える「体への負担の少なさ」

(7)使いやすい広さや大きさ「空間性」

ユニバーサルデザインは、障がい者のみを対象とした「バリアフリー」とは異なる発想とされています。しかし、ユニバーサルデザインの7原則に基づいた空間づくりをすることで、自然とバリアフリーな空間も目指せるということがお判りいただけるかと思います。

2)オフィスにおけるユニバーサルデザインとは

オフィスのユニバーサルデザイン化において重要なのは、人種や性別・障がいの有無にかかわらず、いかにさまざまな人が働ける環境にするかということです。しかし、すべての立場の人が100%満足する空間を作ることは不可能に近く、相当な困難を極めます。

そのため、最初のうちはミニマムでシンプルなオフィスを基本とし、特別不自由を感じやすい人がいる場合は、その都度話し合いながら改善していくことが重要になります。オフィスのユニバーサルデザイン化においては、「シンプルであること」に加え、「選択の余地があること」が重要ということです。

また、オフィスをユニバーサルデザイン化することにより、これまでのオフィス環境で不便を感じてこなかった人にとっても、より働きやすい環境を実現できることに繋がります。快適で使いやすいオフィスは、業務を効率化し、社員同士のコミュニケーションも厚くしてくれます。

こうした点においても、「誰にとっても使いやすいオフィス」を目指すことで、企業全体の活性化も目指せるのです。

2.オフィスにユニバーサルデザインが求められる理由

本記事をご覧になっている方の中には、現在のオフィス環境でも十分機能していると感じている方も多いかと思います。

しかし、現代の日本において、オフィスのユニバーサルデザイン化は積極的に進めるべき問題のひとつと言えます。

その理由は大きく分けて2つ。1つは少子高齢化、もう1つがグローバル環境の発展です。

1)少子高齢化による人材不足

少子高齢化が進む現代の日本においては、さまざまな職種や業種において、慢性的に人材不足な状況が続いています。こうした状況を補うために、国策として定年年齢が引き上げられているほか、国籍や性別、年齢や傷害の有無を問わずに採用することが推奨されています。

少子高齢化による人材不足は解消の目途が立っておらず、今後も同様の状況が続く、あるいはさらに状況が悪化することが予想されています。つまり、現在人手不足が問題になっていない企業においても、さまざまな立場の人を雇用できるようなオフィス環境の整備は、無視できない課題となりつつあるのです。

2)グローバル環境の発展

飛躍的な経済発展を遂げている世界の国々は、ビジネスのフィールドを、国内だけでなく海外にまで積極的に展開しています。

こうした世界中の国が入り乱れるグローバル社会で、日本が生き残っていくためには、これまで以上に柔軟な発想力や機動力が必要になることは言うまでもありません。そして、そうした人材確保のためには、人材の多様性に目を向け、人種や立場に関係なく「優秀な人材」を採用することが急務とされているのです。

多様な人材を受け入れるためにも、あらゆる人が快適に働けるオフィス環境を整備することが求められています。

3.ユニバーサルデザインオフィスに必要な要素

オフィスをユニバーサルデザイン化することの重要性がわかったところで、具体的にどのような点に着目し、オフィス環境を改善する必要があるのかを見ていきましょう。

1)安全に避難できること

火事や地震、台風や洪水などが発生したときに、安全かつ迅速に避難できるかどうかは最も重要と言っても過言ではありません。

危険を知らせる警報は、視覚と聴覚の両方で察知できるものを設置しましょう。オフィスビルでは、火災が起きた際に火災報知機のベルが大音量で鳴り響くものが一般的ですが、連動して光るランプも各所に設置します。

車いすユーザーがいる場合は、万が一の際の避難経路や避難用具を準備しておきましょう。非常時にはエレベーターが使用できなくなるため、定期的に避難訓練を行い、誰がどのような手順・経路で避難の手伝いをするのか、避難用具はどのように使用するのかを日頃から知っておくことも重要です。

2)安全に移動できること

オフィス内を安全に移動できる環境にするためには、「通路の幅」「床の仕様」「整理整頓」の3つを意識します。

車いす1台の幅はJIS規格によって決められており、手動車いすの場合で63cm以下、電動車いすの場合で70cm以下とされています。そのため、一方通行のセキュリティーゲートであれば80cm程度あれば足りる計算になりますが、デスクのある執務室においては、この幅では不十分です。なぜなら、オフィス内では人とのすれ違い・方向転換が発生するため。

車いすユーザーと歩行者が安全にすれ違える幅は120m、歩行転換に必要なスペースは150cm円と言われているため、オフィス内のレイアウトを考える際には注意が必要です。

床の仕様は、段差や斜面のないフラットな状態にするのが理想。段差や傾斜がある箇所は、床の色や素材を変えておくと利用者に伝わりやすくなります。

そして何より、通行の妨げになるものを通路に放置しないことが重要です。どんなにオフィス環境を整えても、段ボールやゴミなどを置いたままにしてしまっては、ユニバーサルデザインとは言えません。

3)誰でも知ることができること

オフィス内設備の使用法や危険表示・誘導を、だれでも一目で理解できるようにすることも、ユニバーサルデザインにおいては重要なポイントです。

しかし、さまざまな国籍を受け入れることを目指しているとはいえ、多数の言語で全ての表記を行うのには限界があります。そんなときに役立つのが「ピクトグラム」です。

「ピクトグラム」とは、伝えたい情報を簡略化し、特定の言語(例えば日本語)が分からない・使えない人にも伝わる状態にしたイラスト・記号のことを言います。身近な例でいうと、ドアに向かって走る人を表した「非常口」のマークや、トイレの位置を示すマークなどがこのピクトグラムに該当します。

ピクトグラムと合わせて色分けを行うことでも、言語に頼らずさまざまな表示を行うことが可能です。

4)フレキシブルなワークスペース

誰もが働きやすいオフィスをデザインするには、レイアウトだけでなく配置するオフィス家具自体にも気を配ることをおすすめします。

オフィス家具を購入する際、まずは椅子の高さから決めましょう。体格に合わせて椅子を決め、椅子の高さに合ったデスクを購入することで、長時間作業しても疲れにくいデスク環境になります。高さ調整ができるデスクを選ぶと、座った状態だけでなく立った状態でも作業ができ、足のむくみや肩こりの防止になるためおすすめです。

また、目線の低い車いすユーザーが不便に思わないよう、オフィス家具の使い方にも配慮することも重要です。例えばキャビネットであれば、使用頻度の高い書類を枢売僧ユーザーでも手の届きやすい位置に配置するといいでしょう。

5)ほっとする休憩室の設置

ユニバーサルデザインオフィスにおいては、社員1人1人にとっての使いやすさ・過ごしやすさを追及するだけでなく、社員同士のコミュニケーションを活性化することも重要です。

そのためには、集中して作業を行う執務室とは別に、ゆったりと休憩できるリラックススペースを設けたり、執務室からの視線や音をシャットアウトした休憩室を作ったりするのがおすすめです。

また、近年では「オフィスラウンジ」と呼ばれる、カフェスタイルのリラックススペースを導入する企業も増えています。フリーアドレスで業務を行えるため、社員同士の情報交換の促進に繋がるだけでなく、自分にとって居心地のいい場所を探せる点が魅力。オフィスのユニバーサルデザイン化の観点からも、導入を検討したいオフィスレイアウトです。

6)誰でも使いやすいトイレ

車いすユーザーだけでなく、高齢者や内部障がい者など、さまざまな人が快適に利用できることを目指した「多目的トイレ」の導入は、ユニバーサルデザインオフィスにおいてはなくてはならないもののひとつだと言えます。

誰でも使いやすいトイレにするためには、下記のような構造・機能を取り入れるといいでしょう。

・車いすが無理なく回転できる150cm円を確保する

・どの姿勢からでも使いやすい位置に操作盤を設置する

・視覚障がい者にもわかりやすい配置にする

・ボタンの区別がつきやすいようにする(洗浄ボタンと非常用ボタンを間違えないように)

・汚物流しを設置する

多目的トイレのレイアウトや搭載機能は、普段意識して使用していなければ、その不便さになかなか気づけません。どのような人が使用するかを想定するだけでなく、実際に使用する人の声も聞くことが大切です。

ユニバーサルデザインオフィスは誰もが働きやすい社会へのスタート地点

少子高齢化やグローバル化により、日本においてもこれまで以上に、さまざまな年齢・人種・性別の人や、障がいを持った人が同じ環境で働く機会が増えることが予想されています。

オフィスのユニバーサルデザイン化は、そうした「これから採用するであろう人材」だけでなく、既に働いている社員にとっても、より快適に業務を行える環境へと導ける取り組みだと言えます。

今後オフィスの移転やリニューアル工事を検討しているのであれば、誰もが働きやすい社会への第一歩として、ユニバーサルデザインオフィスへの移行を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

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参考

ミライロ通信「ユニバーサルデザインとは?~7原則と実現のヒント~」

https://www.mirairo.co.jp/blog/post-2021011502#whatisUD

ファニチャーカンパニー「誰もが使いやすいオフィスを実現するユニバーサルデザインとは?」

REGARD「車椅子の幅(寸法)から考えるバリアフリー内法寸法とは何?」

MarkeTRUNK「ピクトグラムとは?その意味や歴史、作り方を解説します」

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