「オフィスデザインを決めるときにはコンセプトを決めましょう」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
オフィスのコンセプトは、企業の方向性やブランドイメージを明確にするために有効なものですが、その重要性や決め方についてよくご存知でない方もいらっしゃるでしょう。
ですが、特にオフィス移転時はコンセプト決定のチャンスでもあります。今回はオフィスコンセプトを明確にすることの重要性と、具体的にオフィス移転まで進める手順について解説します。
そもそもオフィス移転における「コンセプト」とは、どのようなものなのでしょうか。
「コンセプト」は「概念」という意味を持つ言葉です。
インテリアや内装を決める際に、「ホテルのような高級感のあるベッドルームにしたい」「心身ともにくつろげるリゾートのようなリビングにしたい」といったイメージを持って、購入する家具やカーテンなどを購入する方も多いと思います。「どのような空間にしたいか」「どのような目的を持って空間をデザインするのか」というのが「コンセプト」ということになります。
これをオフィスデザインに当てはめると、「オフィス移転を通して何を実現したいのか」がコンセプトであり、移転先を探し始める前に決めておくことで、明確な方向性を持ってオフィス移転を進めることが可能になります。
オフィスのコンセプトは必ずしも決めなければならないものではありません。しかし、コンセプトを決めたうえでオフィス移転を進めると、さまざまなメリットが得られます。
オフィスのコンセプトを設定しておくことで、オフィスを訪れた人に企業理念をアピールできるという点が1つ目のメリット。
社外に対するイメージ戦略として、サービスや社員の働き方・人間性といった部分をイメージする方も少なくないでしょう。しかし、商談などで来訪者に対して企業のイメージや企業理念を印象付けるツールとして、オフィスデザインは決して無視できるものではありません。
コンセプトの明確なオフィスであれば、自社の企業理念に共感した取引先との商談も、スムーズに進む可能性が高まります。
それだけでなく、ブランディング効果も期待できるため、新たな取引先の獲得や、ビジネスチャンスをつかむきっかけにもなるでしょう。
オフィスのコンセプトを明確にすると、そこで働く社員のモチベーションや業務の生産性向上にも期待できます。
業種や職種・働く社員の個性によって、求められるオフィス環境は大きく異なります。社員の働き方をふまえたオフィスのコンセプトを設定することで、移転前よりも働きやすい作業スペースができ、効率的で生産性の高い業務をこなせる環境が整うという点は大きなメリットです。
また、企業理念を反映したオフィスにより、そこで働く社員が自社の価値観に触れる機会を増やすことも可能です。企業の中長期的な目標を肌で感じられる環境は、社員の自発的な行動の後押しをしてくれるでしょう。
コンセプトが定まったオフィスには、優秀な人材が集まりやすいという点も見逃せないメリットです。
就活・転職活動中の人がエントリー先を探す際、ほとんどと言っていいほど企業のホームページを閲覧することになります。おしゃれな作業スペースや、ゆったりくつろげるカフェのような休憩スペースの写真を見ることで、「こんな会社であれば毎日充実した気持ちで働けそう」という前向きな気持ちを、候補者に与えることができ、優秀な人材を確保するチャンスが広がるのです。
さらに、面接や面談で実際にオフィスを訪れた際にも、企業理念を肌で感じられたり、そこでイキイキと働く社員たちの姿を見ることで、より入社への意欲が高まることも期待できます。
コンセプトが定まったオフィスは、企業の将来を担う人材を確保するためのツールとしても役立つのです。
移転と合わせてオフィスデザインを行う場合、内装だけでなく立地や物件選びも、企業のイメージ戦略やブランディングにおいて重要な要素になります。
数ある物件の中から、自社のイメージや企業理念に合った物件を、なんの指標もなく選択することは困難です。
オフィスのコンセプトを定めることで、何を重視して物件を選べばいいかが明確になります。重視するポイントが明確になると、必然と立地や建物で外せない要素も定まってくるため、「目移りしてしまってなかなか選べない」ということを防げます。
オフィスのコンセプトは、なんとなくアイディアを出せばいいということではなく、順序を追って決めていくことが重要です。
コンセプトを決定する前に、現在オフィスや社員が抱えている問題や課題を、全て洗い出すことから始めます。
具体的には、社員ひとりひとりが集中して作業できる場所が少ない、業務と休憩時間のメリハリがない、社員同士のコミュニケーションや情報交換が少ない、など。より作業効率があがり、企業イメージをアップさせるには、どこを改善すべきかを書き出していきましょう。
オフィス移転際、一部の部門が先導し、上層部だけで全て決定するという企業も少なくありません。しかし、移転によるコンセプト設定とオフィスデザインの効果を最大限に感じるためには、何よりも現場で働く社員の声を聞くことが重要です。
そのため、物件の選定に入るまえに、社員同士がオフィスの課題について話し合ったり、意見を述べたりする場を設けることをおすすめします。
オフィスの課題が見つかったら、オフィス移転の目的を明確にします。オフィスを移転することで何を実現したいのか、どのような課題を解決することを目的とするのかを入念に話し合いましょう。
オフィス移転の目的の例としては、下記のようなものが挙げられます。
・増員のために広い作業スペースを確保したい
・社員同士のコミュニケーションを活発にし、アイデアが生まれやすい環境を作りたい
・優秀な人材を確保し、離職率を下げたい
・取引先との商談が上手くいくよう、企業のイメージアップを図りたい
目的は複数あっても問題ありませんが、あれもこれもと詰め込んでしまうと、オフィスのコンセプトを決定する際に、結局何を重視したらいいのかわからなくなってしまうため注意が必要です。
オフィスが抱えている課題や問題を明らかにし、オフィス移転で実現したいことが定まって初めて、オフィスのコンセプトを決めていきます。
「独創的なアイディアが生まれるオフィス」
「イノベーションを生み出すオフィス」
「関わる人全員が幸せになれるオフィス」
といったように、オフィスデザインによって伝えたいことや実現したいことが、明確に伝わるようなコンセプト設定をしましょう。
このコンセプト設定は「おしゃれなタイトルをつけること」が目的ではないため、「誰に対しても伝わりやすい言葉選び」をすることも大切です。
オフィスコンセプトが明確になったら、実際にオフィスのデザインに落とし込んでいきます。
ここでは、社内の担当者やプロジェクトチームだけで進めても問題ありませんが、可能な限りプロのデザイナーの手を借りることをおすすめします。
プロのデザイナーの手を借りることで、オフィスのコンセプトが反映されたデザインを効率的に実現できるだけでなく、従業員だけでは見えてこなかった企業の課題や、オフィスレイアウトの問題点を解消に導く提案をしてもらえます。
優秀なデザイン会社であれば、企業の要望を叶えるデザインを複数提案してもらえるため、より希望に合ったオフィスデザインに出会える可能性も高まるでしょう。
コンセプトを反映させたオフィスが完成したら、新しいオフィス稼働後に効果検証を行うことをおすすめします。
例えば、旧オフィスでの課題が社員同士のコミュニケーションであったならば、交流や情報交換の頻度は増えたかどうか、業務効率化を目指すことがコンセプトであれば、作業時と休憩時のメリハリをつけられているかなど。
従業員へのヒアリングはもちろん、数値を用いた分析もできると望ましいと言えます。
効果検証を行って、期待していたほどの効果が得られていないことがわかった場合は、レイアウト変更を行ったり新しいシステムを導入したりすることで、状況が改善される場合もあります。
この効果検証と状況の改善は、オフィス移転直後だけでなく定期的に行うのがおすすめです。
どのようなコンセプトにするかによって、オフィスデザインやレイアウトはいかようにも変化します。ここでは4つのコンセプトを例に挙げて、オフィスデザインにどのような違いが出るかを見ていきましょう。
柔軟なワークスタイルを実現するためには、「社員が働く場所を選べること」「ソロワークにもグループワークにも対応できること」などが求められます。
社員自身が気分や業務内容によって働く場所を選べるようにしたいのであれば、集中できるソロワーク用のブースに加えて、1人でもリラックスして作業できるソファー席や、他の社員とのコミュニケーションをとりやすいラウンジスペースが候補になります。
また、オフィス内のデスクやチェアを可動式のものにすれば、普段はソロワーク・ミーティングが必要になったときにはそのまま社員同士で集まる、といった使い方も可能です。
クリエイティブさが求められる企業のオフィスには、集中して業務に取り組める空間と、心身ともにリラックスできる空間の両立が求められます。
例えば、執務スペースはシンプルかつコーポレートカラーを取り入れたシンプルな配色にすることで、作業に集中できる空間になり、休憩スペースには観葉植物やナチュラルな配色の家具を導入することで、忙しい業務の合間でもホッと一息つける空間を演出できます。
さらに近年導入する企業が増えているのが「ホワイトボードシート」。壁に貼り付けるだけで壁一面をホワイトボードとして使用できるので、打ち合わせのときやアイディア出しのときはもちろん、社員同士のコミュニケーションツールとしても活躍するためおすすめです。
コミュニケーションをとりやすい空間をコンセプトに挙げたオフィスでは、部署や役職を問わず、社員同士が顔を合わせる機会を創出することが重要です。
例えばワークスペースにゆったりくつろげるソファーエリアを設置したり、オフィスの髄所にハイテーブルを設置して、ちょっとの時間でも気軽に打ち合わせや意見出しができるようにしたりといった方法があります。
また、息抜きに利用できるオフィスコンビニやフリードリンクのエリアを作れば、自然と社員が集まり会話のきっかけが増えるためおすすめです。
来客が多い企業の場合、来訪者に親しみを感じてもらえるようなあたたかみのある空間を作りたいと考えることも多いでしょう。
ほっと落ち着く空間を作りたいなら、オフィス全体または一部に、ナチュラルな素材を取り入れるのをおすすめします。木目調の壁のほか、間接照明を取り入れたり、白熱灯ではなく暖色系の明かりに変えたりすることで、無機質になりがちなオフィス空間がおもてなし空間へと仕上がります。
また、面談スペースに設置するテーブルや椅子に、高さのないローテーブル・ローソファーを選ぶというのもひとつの手。やわらかい色合い・素材のものを配置すれば、来訪者の緊張をほぐす手助けをしてくれます。
オフィス移転を検討し始めたら、まずは自社の課題や問題を洗い出し、コンセプトを決定することからスタートします。コンセプトが明確に定まることで、どこに移転したらいいか、どんなイメージの物件に移転すべきかが見えてきます。
そしてコンセプトに合ったオフィスデザインのためには、ビルオーナーの協力が必要不可欠。大規模な工事が必要な場合も多く、工事可能な範囲の確認や、入居のスケジュールの調整が重要になるため、オーナーと直接やり取りができる方法で物件探しをすることをおすすめします。
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