オフィス移転や新しい事業所の出店の際に、レンタルオフィスを選択する企業が増えてきています。一般的な賃貸オフィスよりも少ない手続きで契約でき、移転や増床も気軽にできるという点で、特に個人事業主やスタートアップ企業の利用が多いのが特徴です。
しかしすべての企業がレンタルオフィスの利用に向いているかというと必ずしもそうではなく、レンタルオフィスにするのか賃貸オフィスにするのか、慎重に判断することが大切です。
今回はレンタルオフィスと賃貸オフィス、それぞれのメリット・デメリットを紹介しながら、選択する際の基準やポイントについて詳しく解説します。
レンタルオフィスと賃貸オフィスの異なる点は、自社専用スペースとして使用できる範囲にあります。
賃貸オフィスは事業に必要なものを、すべて自社専用の室内で使用します。室内に執務室はもちろん、会議室を作ったりコピー機を置いたりと、自社の事業に必要なものをすべて揃えるのが賃貸オフィスです。
それに対してレンタルオフィスは、自社専用の個室があるという点では賃貸オフィスと変わりませんが、会議室やコピー機といった一部の什器・備品・施設を、同じフロアの企業と共有で使用します。
レンタルオフィスと賃貸オフィスのどちらを選ぶか考える際に、それぞれのメリットとデメリットを知っておく必要があります。まずはレンタルオフィスのメリットとデメリットを見ていきましょう。
レンタルオフィスのメリットは、大きく分けて下記の3つです。
1)すぐに事業を始められる
2)立地がいい
3)事業規模に合わせてオフィスのサイズを柔軟に変えられる
1つずつ詳しく解説します。
レンタルオフィスの大きな特徴の1つに、事業を始めるのに必要な設備や備品がすべてそろっているという点があります。
一般的な賃貸オフィスでは物件を契約してから稼働するまでの間に、内装工事や什器備品の搬入、大規模な引っ越し作業が必要になるため、契約開始から数週間〜数ヶ月程度はオフィスを使用できない状況が続きます。
一方でレンタルオフィスの場合は、専有部分にはあらかじめデスクや椅子が、共用スペースにはコピー機や会議室といった必要な什器備品がそろっています。契約開始と同時に事業をスタートできるうえ、オフィス環境を整えるための費用の大幅なカットも可能です。
レンタルオフィスは都心部のビジネスエリアや主要な駅の近くにあることが多く、多方面からのアクセスがいいというメリットがあります。
主要駅の近くは賃料相場が高いため、一般的な賃貸オフィスを構えるとなると高額な初期費用とランニングコストがかかってしまいます。その点レンタルオフィスであれば、好立地のオフィスを比較的リーズナブルな賃料で借りることができ、企業のブランディングにも役立ちます。
また立地がいいことで、従業員が通勤する際のストレスを軽減できるほか、取引先や顧客の来社時も案内しやすいという側面もあるのです。
1つのフロアに複数の個室が用意されているレンタルオフィスは、事業規模や従業員の数に合わせてオフィスのサイズを柔軟に変えられます。
賃貸オフィスのサイズを変えようとすると、新しいオフィス探しと契約、入居前の内装工事や物品の搬入をおこなう必要があるため膨大な費用や時間がかかります。
レンタルオフィスの場合は同じフロア内に大小さまざまな個室があり、すぐに事業を始められる状態の部屋を借りられます。少ないコストと労力で部屋移動や借り増しが叶うという点はメリットと言えます。
多くのメリットがあるレンタルオフィスですが、もちろん借りることによるデメリットもあります。ここで挙げるデメリットは、「内装や設備が決まっている」・「情報漏えいに注意が必要」の2点です。
レンタルオフィスは室内にあらかじめデスクや椅子が準備されており、共用部にも会議室やコピー機といった必要な什器・備品がそろっています。自社で購入したりレンタルしたりする手間が省ける点はメリットではありますが、用意されているものをそのまま使用しなければならない場合も多くあります。
また内装工事も制限されていることがほとんどのため、自社独自のオフィスを作りたいと思っている企業にとっては物足りなさを感じるポイントです。
さまざまな企業のオフィスが同じフロアにあるレンタルオフィスでは、情報漏えいに対して細心の注意を払う必要があります。
レンタルオフィスは会議室やワークスペース・ミーティングスペースを、複数の企業で共有して使用します。そのため打ち合わせ内容や商談内容を他社に聞かれたり、社内の機密情報が社外に漏えいしたりする危険性があるという点に注意が必要です。
社外に知られてはいけない情報を取り扱う際は、防音性能がしっかりした会議室を利用したり、作業中のパソコンを放置しないようにしたりと、細心の注意を払うようにしましょう。
レンタルオフィスにはフットワークの軽さに大きなメリットが、設備の自由度や情報の取り扱いの面にデメリットがありました。それでは合わせて検討される賃貸オフィスには、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
賃貸オフィスを借りるメリットは、大きく分けて下記の3つが挙げられます。
1)内装や設備にこだわれる
2)面積が広い
3)取引偉業からの信頼を得られる
1つずつ詳しく解説します。
あらかじめ内装や設備が決められているレンタルオフィスとは対照的に、賃貸オフィスでは自社こだわりの内装・設備の導入が可能です。
オフィスの内装は企業理念や他社にアピールしたいブランドイメージなどを投影できる部分です。オフィスデザインやオフィス家具にこだわれる賃貸オフィスを借りることで、訪れる取引先の企業や顧客に対して自社の個性を表現でき、ビジネスチャンスの拡大につなげることが可能になります。
レンタルオフィスで自社専用スペースとして契約できるのは、デスクや椅子を置けるほどの最低限の面積のみです。それに対して賃貸オフィスの場合は契約面積が広く、室内レイアウトの自由度が高い点も大きな魅力です。
デスクを島型に配置する以外に、ソロワーク専用のブースを作ったり、応接室・会議室・リフレッシュルームを作ったりと、事業内容や従業員数・個々の働き方に合わせたオフィスづくりができます。
またオフィス面積が広いことで、レンタルオフィスよりも開放的なオフィス環境を整えることが容易です。あえてパーテーションで区切らず、オフィス全体を見渡せる開放的なオフィスにすることにより、よりクリエイティブに業務をこなせるようになります。
自社専用の空間である賃貸オフィスを借りることは、取引先の企業から信頼を得られる要素の1つにもなります。
レンタルオフィスでも商談をおこなったり顧客を招いたりすることは可能ですが、ほかの企業が多く入居している環境に対してセキュリティーやプライバシーに関する不安がぬぐえません。
その点賃貸オフィスであればすべて自社のみで使用できるため、他社に機密情報が漏れる可能性がなく、取引先との商談が円滑に進む可能性が高まります。
また事業のために融資を受ける際も、賃貸オフィスを借りて継続的に賃料を支払っていること・固定の住所があることが、金融機関に対してのアピールポイントになります。そのためレンタルオフィスに入居するよりも、融資を受けやすくなるという側面もあります。
こだわりのオフィス環境を作れる点や他社からの信用を得やすい点がメリットとして挙げられる賃貸オフィスですが、一方で費用面ではレンタルオフィスと比較すると高額になる傾向にあります。
賃貸オフィスを借りるにあたっては、レンタルオフィスよりも高額な初期費用が必要です。
レンタルオフィスの場合は入居時に保証金や敷金が発生しないことが多く、数万円分の入会金や事務手数料・前払い賃料を支払えば契約できるケースがほとんどです。
それに対して賃貸オフィスの場合はオフィスの面積にもよりますが、賃料の3~12か月分の保証金を預ける必要があるほか、家賃保証会社を利用する場合は保証委託料として賃料の0.5~1ヶ月分支払わなければなりません。さらに不動産会社に仲介を依頼して借りる場合は、賃料の0.5〜1ヶ月分の仲介手数料も発生します。
また退去時に関しても、レンタルオフィスの場合は一般的に室内クリーニングのみで退去できるのに対し、賃貸オフィスの場合は借主の費用負担にて原状回復工事をおこなう必要があります。
賃貸オフィスを借りる場合は毎月の賃料・共益費だけでなく、まとまった初期費用・退去費用を支払えるだけの資金力が不可欠です。
レンタルオフィスの場合は、電気代や水道代といった光熱費やインターネットの利用料も施設利用料に含まれており、追加の費用が発生しないケースがほとんどです。
一方で賃貸オフィスの場合は、電気代・ガス代・水道代といった水道光熱費は使用した分だけ費用が発生し、インターネットに関しても入居前の工事費用・プロバイダー料・退去時の撤去費用も借主負担になります。空調やガスを多く利用するシーズンや、電力を多く消費する機器を使用する企業の場合は、ランニングコストが高くなりやすいという点に注意が必要です。
レンタルオフィスと賃貸オフィスはそれぞれ異なる魅力がありますが、企業のその後の展望や事業内容、求めるオフィス環境によってどちらを選ぶべきかが異なります。今後どのような事業展開を予定しているか、オフィスを選ぶ基準として譲れないことは何かをイメージしながら検討しましょう。
レンタルオフィスに向いているのは、スタートアップ企業をはじめとした、近々従業員の増員を予定している企業です。
レンタルオフィスの魅力の1つに「増床や部屋移動が簡単にできる」点があるということはすでに解説した通りです。特にスタートアップ企業は最初は数人で起業したのち、数ヶ月の間に積極的に求人をおこなって従業員を大幅に増やすことも珍しくありません。従業員数が増えることを見越して最初から広い賃貸オフィスを借りるという選択肢もありますが、人数に対して広い面積分の賃料を、収益が安定しない最初のうちから払い続けるのは簡単ではありません。
レンタルオフィスであれば1〜2人用という小さな部屋から、10人程度で使用できる大きな部屋までバリエーションがあるため、増員状況に合わせて部屋を変えられるというメリットを最大限に生かすことが可能です。
またアクセスを重視してオフィスを借りたいという企業にもレンタルオフィスが向いています。アクセスがいいオフィスは取引先や顧客からのイメージアップにつながるだけでなく、従業員の満足度向上にも役立ちます。オフィスの立地の良さは優秀な人材確保に不可欠な要素とも言えるため、人材確保に力を入れたい企業におすすめです。
賃貸オフィスに向いているのは、オフィスのレイアウトにこだわりたい企業と機密情報の取り扱いが多い企業です。
賃貸オフィスでは、契約したオフィス全体を自社専用のスペースとしてレイアウトできるため、自社のカラーに合わせたレイアウトに仕上げることで、取引先に自社のブランドイメージを伝えることが可能になります。
また従業員が働く場所を選べるフリーアドレスを導入したり、気軽に打ち合わせや意見交換・情報交換ができるようなオフィスラウンジを設けたりと、業務効率化やコミュニケーションの活性化を目指せるオフィス環境を整えることもできます。
機密情報の取り扱いが多い企業にとっても、自社の専用スペースが広い賃貸オフィスを借りることは非常に有効です。セキュリティーや情報管理がしっかりとしているオフィスは、取引先の企業からも「信用できる企業」というイメージを持たれやすくなり、次のビジネスチャンスにつながるのです。
今回はレンタルオフィスと賃貸オフィスが持つ特徴について解説しましたが、最終的にどちらを選ぶかは、実際に物件に足を運びその場所で事業をおこなうイメージをしながら決めていくことになります。そして物件を比較する際には、インターネット上にある物件資料を参考にするだけでなく、物件の貸主とやりとりをしながら、検討している物件のメリットやデメリットを冷静に見極めなければなりません。
オフィス専門の【cocosy】は、新しい入居者を探すビルオーナーと、自社にぴったりなオフィスを探す企業を直接つなぐプラットフォームです。気になる物件が見つかったら、ビルオーナーにチャットで問い合わせることで、物件の詳細を聞いたり内見の申し込みをしたりすることも可能。レンタルオフィスと比較して入居までに期間が必要な賃貸オフィスでも、不動産会社をとおさないことでスムーズに契約まで進めます。
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