障害者や高齢者が安全に暮らせる環境を目指して導入される「バリアフリー」。公共交通機関や公共施設だけでなく、近年ではオフィスにも取り入れる企業が増えていることをご存知でしょうか?
バリアフリーオフィスを目指すことで、車いすユーザーや歩行が困難な人・力の弱い人でも働きやすい環境が整うだけでなく、現在働いている従業員の満足度向上にも期待できます。
本記事ではオフィスにバリアフリーを導入すべき理由と、オフィス移転と合わせてバリアフリーを取り入れる際のポイントについて解説します。
みなさんは「バリアフリー」と聞いてどのような内装をイメージするでしょうか。ここではバリアフリーを取り入れたオフィスの特徴について見ていきます。
オフィスにおける「バリアフリー」は、障害者や高齢者でも利用しやすいオフィス環境を目指して取り入れられるものです。
例えば車いすユーザーや歩行が困難な人でもスムーズに移動できるように、段差を極力なくしてスロープを設けたり、車いすに乗った状態でも自由に往来・方向転換ができるように、広々とした廊下や通路を設けたりといった工夫ができます。
またバリアフリーオフィスでは什器備品のサイズや、操作パネル・ボタンを設置する高さにも配慮します。備品や書類を保管する引き出しを車いすユーザーの目線に設置する、オフィスデスクを高さ調整可能なものにする、フリーアクセスフロアにしてパソコンやOA機器の配線を床下に入れるといったレイアウトも、バリアフリーなオフィス環境には欠かせません。
バリアフリーとよく比較される考え方に「ユニバーサルデザイン」というものがあります。
バリアフリーが障碍者や高齢者といった限定された人々にとっての障壁をなくすことを目指すのに対し、年齢や人種などを問わずすべての人たちが快適に暮らせる環境を目指すのが「ユニバーサルデザイン」です。
障壁を取り除く「バリアフリー」と、誰でも使いやすい環境を目指す「ユニバーサルデザイン」は、概念としては似て非なるものです。しかし障害者や高齢者が生活や労働において不自由に感じるポイントを想像して改善していくことで、結果的に「誰にとっても使いやすいオフィス」にすることにもつながります。
バリアフリーというと商業施設や公共施設といった、不特定多数の人が訪れる場所をイメージする方もいらっしゃるかもしれません。しかし近年では、オフィス内のバリアフリー化も急務とされており、オフィス移転のタイミングでバリアフリーオフィスを構築する企業も増加しています。
日本においてオフィスのバリアフリー化が急務とされる理由には下記に紹介する3つが挙げられます。
「バリアフリー新法」は2006年12月に施行された法律の通称で、障害者や高齢者が円滑かつ安全に移動できるよう、新しく設置する公共交通機関や建築物などに対してバリアフリーへの適合を義務化したものです。
バリアフリー新法においては、病院・学校・百貨店・事務所などの「特定建築物」に関してはバリアフリー化が義務とされておらず、積極的な取り組みをおこなうことが望ましいとされています。しかしながら、2018年11月におこなわれた同法の改正により、さらなるバリアフリー化への取り組み強化が求められるようになりました。
オフィス環境にもバリアフリーを取り入れることで、働く人々が物理的な側面だけでなく、心の面でも障壁を感じない空間づくりが必要とされています。
「障害者雇用促進法」は、障害者が自身の希望・能力・適性を十分に生かしながら、障害の特性などに合わせて活躍できる社会を目指すための法律です。
2015年に「障害者雇用法」が改正されたことにより、一定数以上の従業員がいる企業は、従業員数に対して「法定雇用率」以上の身体障害者・知的障害者・精神障碍者(2018年改定)を雇用することが義務化されました。さらに募集・採用、賃金、配置、昇進などにおける差別の禁止や、従業員それぞれが持つ障害に対した配慮をおこなうことなどが義務として規定されています。
なお2023年4月現在においては、民間企業に対して定められている法定雇用率は「2.3%」で、従業員が43.5人以上の企業が対象です。法定雇用率は今後も段階的に引き上げられることが予定されており、2024年4月以降には従業員数40.0人以上の企業に対して2.5%、2026年7月には従業員数37.5人以上の企業に対して2.7%の法定雇用率となる予定です。
(参照:厚生労働省リーフレット(障害者の法定雇用率引き上げと支援策の強化について)https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf)
すべての国民が障害の有無や年齢などの条件に左右されず、等しく基本的人権を持つ個人として尊重される社会を目指すために2018年に制定されたのが「ユニバーサル社会実現推進法」です。
この法律で目指す「ユニバーサル社会」というのは、障害の有無や年齢にかかわらず、すべての国民が等しく基本的人権を持つ個人として尊重される社会のことを言います。障害者や高齢者が自立した日常生活や社会生活を送れるよう、施設や製品をだれでも利用しやすいものにすることが求められています。
またユニバーサル社会実現推進法においては、障害者や高齢者が施設を利用する際の利便性や安全性を確保することも重要とされています。つまり今後のオフィス環境についても、誰もが快適に仕事ができることを意識した空間づくりを意識することが大切ということです。
バリアフリーオフィスの実現のためには、障害者や高齢者が不便と感じるポイントを知り、1つ1つ解消していくことが求められます。本章では実際にオフィスをバリアフリー化する際に導入できる、内装の例を5つ紹介します。
バリアフリーと聞くと「階段や段差のない床」をイメージする方も多いかもしれません。車いすユーザーや歩行が困難な人・高齢者にとって、ちょっとした段差やでっぱりのある床は、日常生活でストレスを感じやすいポイントの1つです。段差を極力なくしてスロープを設けることで、誰でもスムーズに移動できるオフィスになります。
また段差をなくすだけでなく、床に通行の妨げになるものを放置しないことも重要です。パソコンの配線を床下に隠したり、段ボールはすぐに解体して処分したりといった配慮や工夫をしましょう。
ドアノブを持って押したり引いたりして開閉するタイプのドアは、目線が低く小回りがききにくい車いすユーザーにとっては不便を感じるケースが非常に多くあります。
バリアフリーオフィスにおいては「横開き半自動ドア」を導入することで、車いすユーザーでも楽に開け閉めできるようになり、オフィス内での移動が楽になります。
多くのオフィス家具や什器が並べられた事務所内では、従業員同士が衝突しないような工夫が必要です。特に見通しの悪いエリアに設置するものとして有効なのが「カーブミラー」です。
通路や執務室エリアの曲がり角にカーブミラーを設置することで、オフィス内の移動の際にお互いの場所を確認でき、衝突による怪我などを未然に防ぐことができます。
バリアフリーオフィス実現のためには照明のスイッチにも配慮しましょう。
使いやすい照明スイッチの位置は、普段立って移動する人と車いすユーザーとで大きく異なります。物件に入居した時点では、ほとんどの場合で照明スイッチは高い位置のみに設置されています。
車いすユーザーでも使いやすい低い位置にもスイッチを追加したり、スイッチ自体も怪我をしている人や力の弱い人でも簡単に操作できるタイプのものに変更したりといった工夫が必要です。
ただ利便性の高いオフィス環境を整えるだけでなく、普段から従業員同士の意見交換やコミュニケーションが活発におこなわれる空間づくりをすることも、オフィスのバリアフリー化にとって不可欠な要素です。
リフレッシュルームは業務の合間の息抜きや休憩時にも利用できますが、従業員同士のコミュニケーションの場としても役立ちます。雑談の中から新しいビジネスのアイディアが生まれるだけでなく、バリアフリーオフィス実現のための改善点が見つかることもあり、会社全体で働く環境をよりよくしていこうという意識づけができるようになるのです。
バリアフリーオフィスの実現のためには、オフィスレイアウトやオフィスデザインを入念に打ち合わせる必要があり、また完成までに多くの費用と期間を要します。「便利そう」「使いやすそう」だからといってやみくもに設計してしまうと、実は自社には不要な機能を追加してしまったり、かえって不便さを感じてしまったりする可能性もあります。
バリアフリーオフィスを作る際には下記4つのポイントを押さえて、計画的に進めるようにしましょう。
バリアフリーオフィスを作る際には、物件探しの段階からバリアフリーオフィスにすることを念頭に置いておくことが重要です。
障害者や高齢者が働きやすい環境を作るためには、床や壁といった大掛かりな工事が必要な箇所に手を加える必要があります。最初からOAフロアになっている物件や段差がない物件であれば、少ない費用と短い工期での入居が叶いますが、選ぶ物件によってはオフィス全体を大規模にリフォームする必要があり、想像以上の費用と期間がかかってしまいます。
移転先のオフィスをバリアフリー化する場合は、少ない工事でバリアフリー化ができる物件を探すことが重要です。
オフィスの内装は企業イメージの定着やブランディング、従業員に企業理念を意識させるといった役割も果たします。バリアフリー化ばかりに意識が向かないよう、自社のイメージに合ったオフィスデザインやレイアウトになっているかを確認しながら工事計画を練りましょう。
またオフィス移転による業務効率化を実現するためには、バリアフリーに配慮しながらも、業種や業務内容に合った機能・セキュリティになっているかも意識することが重要です。
近年の日本においてはバリアフリーオフィスはもちろんのこと、誰もが安全かつ快適に仕事ができる「ユニバーサルオフィス」の実現が理想とされています。
ユニバーサルデザインを意識したオフィスであれば、従業員が働きやすいだけでなく、オフィスを訪れる取引先や顧客にとっても居心地のいい空間になり、企業イメージのアップが期待できます。
障害者や高齢者だけでなく、さまざまな人種や宗教・年齢の人々にとって、自分の個性や能力を生かして働ける・過ごせる空間づくりが、これからの日本でも加速度的に求められるようになるでしょう。
バリアフリーオフィスを実現するためには大規模な工事が必要なケースも多いため、ビルオーナーとの密な連携が不可欠です。
内装工事の内容によっては大きな音や振動が発生することもあり、工事ができる曜日や時間帯が指定されているオフィスビルも少なくありません。また室内工事の際に手を加えていい部分と、建物の構造上、手を加えることが許可されない部分があるため、大規模なリフォームをおこなう場合にはビルオーナーに許可を得る必要があります。
工事が予定どおりに完了するか、希望どおりの内装に仕上げられるかを確認するためには、物件の契約前からビルオーナーと密にやりとりをおこなうことが重要です。退去時には原状回復工事をおこない、契約開始時の状態に戻して退去することになるため、原状回復の範囲についてもあらかじめ確認しておくと安心です。
バリアフリーオフィスを実現するためには、ビルオーナーと密にやり取りをしながら進める必要があります。ところがこれまでのオフィス探しでは、不動産会社の仲介で内見から契約までおこなうのが一般的だったこともあり、ビルオーナーと直接やり取りする機会が少ないという不安要素がありました。
オフィス専門の【cocosy】は、新しい入居者を探しているビルオーナーと、移転先のオフィスを探す企業をつなぐプラットフォームです。
気になる物件があればチャットを活用してビルオーナーに直接メッセージを送れるため、契約前の内見や物件詳細の確認も、非常にスムーズに進められます。
不動産会社が仲介に入らないため仲介手数料も不要です。仲介手数料がかからないぶん、オフィスデザインにさらにこだわったり、新しい設備を導入したりといったことも叶います。
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誰もが働きやすく快適なバリアフリーオフィスを実現するには、まずは企業様に優しいオフィス探しから。【cocosy】を活用し、賢くオフィス探しをしてみましょう。